「読字障害が見られる…」
「話しかけても、聞き取り能力が弱い…」
学習障害(LD)のお子さんは、このように一部の学習機能において、遅れが見られることが多いです。
逆に、瞬間記憶や大人顔負けの絵など、一部の脳力でほかのお子さんよりも秀でているケースもあります。
ただ、読字障害や聞く力に関する脳の分野の発達に遅れがあると、保育園や幼稚園での生活、小学校での授業などにつていけず、不登校や引きこもり、うつ病など二次障害につながるリスクもあります。
また、このような学習障害の症状は脳の発達の問題があるため、脳が比較的変化しやすい時期に適切なトレーニングをおこなうことで症状を改善したり、悪化するのを防いだりすることができます。
そこで、今回はLDのお子さんをお持ちのお母さん・お父さん、また、そのような生徒をクラスに抱える学校の先生にむけて、LDのお子さんとの関わり方やそのポイントについてわかりやすく解説します。
なるべく実践しやすいよう、具体的なケースに分けて、その対応法を解説してくので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
【どうやって関わればいいの?】
学習障害のお子さんの特徴と関わり方
学習障害は、LD(Specific Learning Disorder)とも言われ、日本語では「限局性学習症」と呼ばれています。
また、日本では、「学習障害(Learning Disabilities)」という呼び方が広く浸透しています。
ですが、日本において学習障害は「読む・書く・算数・推論する(見通しを立てる)における困難」に加えて「聞く・話す」もプラスされて考えられています。
これらは子どもが保育園や幼稚園、小学校以降の生活で必要なスキルです。
そのため、これらの能力に遅れが見られると、不登校や引きこもりなどの二次障害につながる可能性もあります。
そこで、今回は、具体的なケース別にLDのお子さんとの関わり方や対応方法、そのポイントについて解説してきます。
①【意味で区切って読むことができない】
意味ごとにスラッシュをひく練習をする
LDのお子さんは、文章を意味で区切って読むことができない特徴がみられることがあります。
たとえば、
「あめがふる」
という文章があったとき、通常のお子さんであれば、
「あめ が ふる」
というふうに意味で区切って文章を読むことができます。
でも、LDのお子さんはこれをそのまま読んでしまいます。
そういうときは、まず最初は意味ごとにスラッシュを引いて、どこで意味が区切れるのか示してあげるようにしましょう。
(LDのお子さんは視覚的認知が優れいていると言われています)
そして、慣れてきたら、それをお子さん自身が自分でスラッシュを引いて区切れるように促しましょう。
この特徴に関しては、少しずつ語彙力や漢字などを学習していけば、改善も見られるはずです。
そのため、まだひらがなだけしか習っていなかったり、語彙が乏しかったりする段階では補助的なものとしてスラッシュで意味を区切る方法を用いさせるようにしましょう。
②【どこを読んでいるかわからなくなる】
線を引いたり、音読しながら読ませる
LDのお子さんは読字障害の影響で、文章を読んでいる途中に、どこを読んでいるかわからなくなってしまったり、同じところを繰り返し読んでしまったりする症状が見られます。
この場合は、鉛筆で線を弾きながら、読ませるのが一番現実的でおすすめです。
ただ、
「教科書に線を書き込みたくない!」
「汚くなるのが嫌だ!」
という場合は、読んでいる文だけを移すことができる切り抜き型の補助教材などもあるので、そういったものを使用するようにしましょう。
(ただ、小学校に上がって、テストなどを受けることを考えると、そのような補助教材に頼りすぎるのは個人的におすすめしません。)
また、家などでおこなう場合は、「音読」がオススメです。
口に出して読むことで、脳の活性化にもつながりますし、同じ文章を繰り返し読むことも少なくなります。
また、音読であれば、聴いている側も、意味で区切って読むことができているか、文章の内容を理解できているかなどを確認しやすくなります。
そのため、家など音読が許される環境であれば、音読を積極的にさせることも大切です。
③【文字の発音が上手にできない】
絵本を相互的に読んだり、言葉遊びをする
LDのお子さんは、「キャ」「ショ」「ニュ」などの「拗音(ようおん)」や「チューリップ」などの「促音」で表現される文字や言葉をうまく発音できない特徴が見られることがあります。
このような特徴が見られる場合、「絵本の双方向性の読み聞かせ」がおすすめです。
(ただし、これは幼児~小学校低学年・中学年までになります)
これは絵本を読み聞かせながら、物語や登場人物について質問したり、一行ずつ読み合ったりすることです。
(「この子はどんな気持ちかな?」「◯◯ならどうする?」など質問しながらやってあげることが大切です。)
そういったなかで出てきた「拗音(ようおん)」や「促音」などを読ませるようにしましょう。
また、それに加えて、普段の会話やしりとり、言葉遊びなどをしてあげることも大切なので、1日10~15分でいいので、そのようなトレーニングを取り入れてみてください。
このとき、じょうずに読めなくても叱る必要はなく、ゲーム感覚で楽しくやってあげましょう。
④【文字がゆらいだり、にじんだり見える】
まずは医師の診断を受けて、指示を仰ぐ
LDのお子さんは読むときに困難を示すことが多いです。
(その要因はここまでご紹介してきたものなどが考えられます)
また、その要因のひとつに、見ている文字がゆらいで見えたり、にじんで見えたりすることもあります。
この症状が見られた場合は、まず医師に相談しましょう。
また、その後、その医師のアドバイスに従って、対応していく必要があります。
⑤【文字の形や大きさがバラバラになる】
1マスが大きいノートなどを用いる
LDのお子さんは、マスのなかにおさまるように文字や数字を書くことが苦手なケースが多くみられます。
そのため、文字の大きさがバラバラであることが多いです。
これは、発達段階にもよりますが、乳幼児であれば、そこまで過度に神経質になる必要はありません。
ただ、小学校に入学してからは、枠内におさめて文字を描いたり、指定された場所に文字を掻くことは必要になってきます。
そのため、小学校に入学しているお子さんの場合は、少しずつ、枠内におさめたり、文字の大きさを統一して書く練習が必要です。
ただ、いきなり小さいマス目のノートだと、そこにおさめるのが難しいケースがあります。
ですので、最初は1マスが大きいノートを与えるようにしましょう。
⑥【作文が書けない】
日記や感想文、写経から始めてみる
これは発達段階にもよりますが、小学生以上のお子さんであれば、簡単な文章が書けてもおかしくありません。
そのため、小学校2、3年生になっても、簡単な文章や「主語+述語」の文章が書けない場合はLDの可能性があります。
また、作文だけでなく、「れ」と「わ」のように形が似ているものは書き間違えたり、「い」と「こ」、「く」と「へ」など90度回転させると同じような形になるひらがなを書き間違えたりすることも見られます。
加えて、文章などを書くときに「、」「。」などの句読点を打ち忘れたり、誤った位置に書いてしまう特徴が見られます。
このような場合、まずは日記や感想文から始めてみましょう。
ただ、文章の型や書き方などはわかないことが多いので、最初はお母さんやお父さんが基本的な型などを教えてあげながら教えるようにしましょう。
また、それがむずかしい場合は、簡単な文章や好きな本などを、そのまま書き写させる「写経」もひとつの方法としておすすめです。
どちらの方法が適しているかはそのお子さんの好みにもよりますので、どちらがいいかぜひ試してみてくださいね!
また、最初の方は書けたことをとことん褒めてあげましょう。
それから少しずつ、誤字脱字や句読点の打ち方などを直してあげるようにしましょう。
⑦【聞き間違いや聞き逃しが多い】
絵や図で視覚的にわかるように説明
LDのお子さんには、聴覚過敏の症状が見られることがあり、ちょっとした雑音やノイズに敏感に反応してしまい、それが原因で聞き間違いや聞き逃しをしてしまうことがあります。
また、このような症状がみられる場合、発達段階ではなくて、聴覚に障害があったり、異常があったりすることもあります。
そのため、第一ステップとしては医師の診断を受けましょう。
そして、もしLDと診断を受けたのであれば、「双方向の読み聞かせ」などをおこない、聞く力を養う必要があります。
また、お子さんに何かを言うときは、「ゆっくり」「わかりやすく」「短く」伝えるようにしましょう。
ただ、聞く力をトレーニングしても、成果が出るには少し時間がかかるため、絵や図など視覚的に理解しやすいように工夫するのも大切になります。
⑧【順序立てて話すことが苦手】
会話を通じて、話し方のルールを教える
LDのお子さんは伝えたいことや話したいことがあっても、それを言葉にするときに上手に伝えることができなかったり、話の構成をうまくつくれなかったりすることがあります。
ですので、「なにか困ったことがあったら相談してね」と言っても、お子さん自身、それができず、一人で思い悩んでしまうことがあります。
ですので、日々のコミュニケーションのなかで話し方のルールを少しずつ教えていく必要があります。
ただ、子どもの話に「主語が抜けている!」「話がわからない!」と真っ向から否定するのはNGです。
ですので、子どもの話し方を否定せず、
「それは◯◯ということ?」
「こういうふうに話したらもっと伝わるかもよ!」
というふうに子どもの話を確認したり、話し方についてアドバイスしたりするようにしましょう。
【脳のトレーニングが必要不可欠!】
LD改善のための2つのトレーニング
学習障害の原因は脳のアンバランスな発達が原因です。
ただ、脳は一生をかけて変化しつづけるため、しっかりとトレーニングをすることで改善できます。
ですが、脳は各機能(「見る」「聞く」「話す」など)ごとに発達しやすい時期(※)が決まっています。
※機能ごとに脳が発達しやすい時期を「感受性期」「臨界期」「敏感期」などと言います。
また、脳は若ければ若いほど変化しやすいです。
そのため、子どものうちにしっかりと脳のトレーニングをすることで、学習障害の症状を改善することができます。
また、脳のトレーニングに関しては、“直球トレーニング”と“変化球トレーニング”の2つがあります。
直球トレーニングは、脳の発達が遅れている領野に対してダイレクトな変化を与えることです。
変化球トレーニングは、直球トレーニングで脳が根本的に改善し、成果が見られるまでの“補助的な工夫”のことです。
たとえば、聞く力が弱いお子さん対して、絵本の読み聞かせなどをすることは”直球トレーニング”です。
ただ、聞く力がしっかりと身につくまでは時間がある程度かかるので、そのお子さんが理解しやすいように絵などで視覚的にわかりやすくしてあげるのが”変化球トレーニング”にあたります。
このように、2つのトレーニングを実践して、改善していくことが大切です。
さいごに
ここまで、学習障害に見られやすいお子さんへの具体的な関わり方や対処方法に関して解説してきました。
学習障害に関しては、“直球トレーニング”と”変化球トレーニング”の2つのトレーニングを併用しながら改善していくことが大切です。
また、脳が比較的変化しやすい乳幼児期(特に8歳まで)にしっかりと適切なトレーニングをする必要があります。
それを踏まえて、まずは今回ご紹介したLDのお子さんとの具体的な関わり方を実践してみることを大切にしましょう。