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【わかりやすく解説】子どもの学習障害(LD)の特徴・症状と診断基準

「どこを読んでいるのかわからない…」

「形の似た文字を書き間違える…」

このような症状が見られると「学習障害なのではないか…」とお母さんやお父さんは不安になりますよね…。

学習障害(LD)は代表的な発達障害のひとつです。

主に「読み・書き・計算」に問題が生じることが多く、普段の日常生活に加えて、学校での勉強などで遅れをとる原因にもなります。

また、乳幼児期から小学生の子どもはデリケートな時期でもあるので、学校の授業についていけなかったり、周りの子どもよりできないと自覚してしまうことで心にダメージを受けることはもちろん、ひどい場合は”不登校”や”引きこもり”になってしまうこともあります…。

そのため、学習障害的な症状が見られたら、まずは小児科や精神科で診断をしてもらうことが大切です。

なぜなら、学習障害が早い時期に見つかれば、脳がやわらかいうちに改善することができ、問題となる症状を改善できる可能性が高くなるからです。

ただ、学習障害といっても、その特徴や症状はさまざまです。

そこで今回は学習障害のお子さんに見られやすい特徴や症状について解説します。

ですので、お子さんが学習障害かもしれないと不安を感じている方や診断を受けようか迷っている方はぜひ参考にしてみてくださいね。

【どんな特徴・症状が見られるの?】
学習障害のお子さんの18の特徴・症状

学習障害(LD) のお子さんには共通して見られる特徴や症状があります。

具体的には以下の15の特徴・症状があります。

①意味で区切って読むことができない

②途中でどこを読んでいるかわからなくなる

③形の似た文字を読み間違える

④拗音(ちゅ)や促音(っ)の文字を発音できない

⑤読めない文字を想像で補って読む

⑥文字がゆらいで見えたり、滲んで見えたりする

⑦コントラストが強いくて目がチカチカする

⑧形の似た文字を書き間違える
(90度回転させると似ている文字も含む)

⑨「、」「。」「っ」を書くのを忘れる
(誤った位置に書くこともある)

⑩文字の形や大きさがバラバラになる

⑪作文が書けない

⑫聞き間違いや聞き逃しが多い

⑬順序立てて話すことが苦手

⑭簡単な計算ミスが頻繁にある

⑮繰り上がりの計算になるとわからなくなる

⑯図形のイメージや空間の認知が弱い

⑰推論することが苦手…

⑱手先が不器用
(箸を使えない、鉛筆をもてない、など)

では、それぞれの特徴・症状についてもう少し詳しく見ていきましょう。

①意味で区切って読むことができない

LDのお子さんは、意味で区切って文章を読めないことがあります。

たとえば、

「あめがふる」

という文章があったとき、通常のお子さんであれば、

「あめ が ふる」

というふうに意味で区切って文章を読むことができます。

ですが、LDのお子さんの場合、このように意味のまとまりを見極めて、区切ることができず、そのまま読んでしまう特徴がみられることがあります。

そのため、すでに知っている言葉で構成されているのにもかかわらず、意味で区切って読むことができない場合はLDの可能性があります。

②途中でどこを読んでいるかわからなくなる

LDのお子さんは、本や国語の文章を読んでいる途中で、どこを読んでいるかわからなくなることが多く見られます。

そんため、文章を音読して、同じところを何回も読んでしまったり、途中でどこを読んでいるかわからず黙ってしまう場面が多くみられる場合はLDの可能性があります。

③形の似た文字を読み間違える

LDの場合「はる」「ほる」など形の似た文字を読み間違えることが多いです。

そのため、本や文章を読んだりしていて、このようなまちがいが頻繁に起こる場合は、LDの可能性があります。

④拗音(ちゅ)や促音(っ)の文字を発音できない

LDのお子さんは、「キャ」「ショ」「ニュ」などの「拗音(ようおん)」や「チューリップ」などの「促音」で表現される文字や言葉をうまく発音できない特徴が見られることがあります。

そのため、毎回このような拗音や促音のときにまちがった発音をしてしまう場合はLDの可能性があります。

⑤読めない文字を想像で補って読む

文章や本を読んでいて、読めない漢字があったときに、LDのお子さんはしばしば創造力でおぎなって読もうとします。

たとえば「悲しい」を「さみしい」と読むなどの症状です。

このような力は一概に悪いこととは言えませんが、すでに習っているはずの漢字である場合などは特に注意が必要です。

⑥文字がゆらいだり、にじんだり見える

LDのお子さんは読むときに困難を示すことが多いです。

(その要因はここまでご紹介してきたものなどが考えられます)

また、その要因のひとつに、見ている文字がゆらいで見えたり、にじんで見えたりすることもあります。

そうなると、余計に文字や文章を読むことはむずかしくなります。

そのため、

「文字がぼやぼやしている」

「ゆらゆらして見える」

などとお子さんが発したら、必ず診断を受けるようにしましょう。

⑦コントラストが強くて目がチカチカする

LDのお子さんが読字困難になる理由として、紙の白色と文字の黒色のコントラストが強くて目がチカチカするといったことも挙げられます。

そのため、そのようなことを匂わせる言葉をお子さんが発した場合はLDの可能性があります。

⑧形の似た文字を書き間違える

先ほどご紹介した特徴に「③形の似た文字を読み間違える」というものがありましたが、それは「書く」という行為でもみられます。

「れ」と「わ」のように形が似ているものは書き間違えることが多いです。

また、「い」と「こ」、「く」と「へ」など90度回転させると同じような形になるひらがなも同様に書き間違えが見られることが多いです。

そのため、このような特徴や症状が目立つ場合は、LDの可能性があります。

⑨「、」「。」「っ」を書くのを忘れる

LDのお子さんは、文章などを書くときに「、」「。」などの句読点を打ち忘れたり、誤った位置に書いてしまう特徴が見られます。

また、促音である「っ」も書き忘れてしまうことがあります。

もちろん、句読点などのルールを学ぶ前の時期やその前後であれば、ただのミスであるケースもありますが、そうでない年齢であればLDの可能性があります。

⑩文字の形や大きさがバラバラになる

LDのお子さんは、マスのなかにおさまるように文字や数字を書くことが苦手なケースが多くみられます。

そのため、文字の大きさがバラバラであることが多いです。

また、大きさ以外にも形がバラバラだったりすることもあるので、気になる方はお子さんが書いたものやノートなどをチェックしてみるようにしましょう。

⑪作文が書けない

これは発達段階にもよりますが、小学生以上のお子さんであれば、簡単な文章が書けてもおかしくありません。

そのため、小学校2、3年生になっても、簡単な文章や「主語+述語」の文章が書けない場合はLDの可能性があります。

⑫聞き間違いや聞き逃しが多い

LDのお子さんには、聴覚過敏の症状が見られることがあり、ちょっとした雑音やノイズに敏感に反応してしまい、それが原因で聞き間違いや聞き逃しをしてしまうことがあります。

また、このような症状がみられる場合、発達段階ではなくて、聴覚に障害があったり、異常があったりすることもあります。

ですので、普通なら聞き取れるくらいのスピードや声の大きさにもかかわらず、聞き間違いや聞き逃しが多い場合は、念のためはやめに診断を受けるようにしましょう。

⑬順序立てて話すことが苦手

LDのお子さんは伝えたいことや話したいことがあっても、それを言葉にするときに上手に伝えることができなかったり、話の構成をうまくつくれなかったりすることがあります。

ですので、「なにか困ったことがあったら相談してね」と言っても、お子さん自身、それができず、一人で思い悩んでしまうことがあります。

もちろん、発達段階を考慮する必要はありますが、明らかに話をまとめるのが苦手であったり、筋道を立てて話すことができない場合はLDの可能性があります。

⑭簡単な計算ミスが頻繁にある

小学生に上がってから、簡単な足し算や引き算などの計算で頻繁にミスがみられる場合は、LDの可能性があります。

(たまにケアレスミスする程度なら問題ありません)

また、LDのお子さんは「+-×÷」などの四則計算の記号の意味を理解して活用することができない場合もあります。

そのため、すでに習っていて、ほかのお子さんができる段階で、このような計算ミスが頻繁に目立つ場合はLDの可能性があります。

⑮繰り上がりの計算になるとわからなくなる

LDのお子さんは、簡単な計算ができても、繰り上がりや繰り下がりの計算になるとわからなくなってしまう場合があります。

ただ、もちろん、最初からどの子どももこのような計算ができるわけではありません。

そのため、すでに習っていて本来なら習得していておかしくない時期になっても、できない場合はLDの可能性があります。

⑯図形のイメージや空間の認知が弱い

LDのお子さんは図形のイメージができなかったり、十の位や一の位などの空間の認知ができない場合があります。

そうなると、図形の問題が解けなかったり、ひっ算などをするときに、桁をまちがえたりすることがあります。

そのため、このような特徴が目立つ場合はLDの可能性があります。

⑰推論することが苦手…

LDの主な症状のひとつに「推論における苦手」があります。

推論が苦手だと、図形の高さや辺の数、分数の概念、表やグラフからの読み取りがむずかしくなります。

⑱手先が不器用

LDは、実は手先の動きや全身の運動などに障害的なものがみられるケースもあります。

たとえば、手先が不器用なために、箸が使えなかったり、鉛筆をもてなかったりすることも…。

また、もちろん、LDのお子さんで運動神経がいいお子さんもいますが、全身運動が苦手なお子さんもいます。

この場合、ほかの発達障害と併発している可能性もあります。

ですので、手先の動きや全身運動に異常が見られたりする場合にはLDの可能性があることもしっかりと把握しておきましょう。

【そもそも学習障害ってなに?】
「読み・書き・計算」の障害

学習障害は、LD(Specific Learning Disorder)とも言われ、日本語では「限局性学習症」と呼ばれています。

また、日本では、「学習障害(Learning Disabilities)」という呼び方が広く浸透しています。

LDは、元々、「読む・書く・算数・推論する(見通しを立てる)における困難」と定義がなされており、学習障害か診断するときにもアメリカ精神医学会の診断基準「DSM」や世界保健機関(WHO)が作成した「ICD-10」を用いておこないます。

ですが、日本において学習障害は先ほどの「読む・書く・算数・推論する(見通しを立てる)における困難」に加えて「聞く・話す」もプラスされて考えられています。

また、「読み・書き・計算」がうまくできないのは努力不足と誤解されがちですが、そうではありません。

この原因は、主に脳の発達の遅れや異常などが考えられています。

(もちろん、本人の努力不足である可能性もありますが、脳の発達に異常がある場合、お子さん自身もできないことに苛立ちを覚えています。)

ただ、逆に適切に脳のトレーニングをすれば、問題となる症状が改善することもできます。

(ですので、早めの診断が大切になるのです。)

また、学習障害のお子さんは知的能力(IQなど)は問題ありませんが、特定の能力に障害が見られることがほとんどです。

ですので、小学校に入学すると、特定の教科だけ成績が悪いなどの特徴もみられます。

一方で、異常に暗記能力が高かったり、大人顔負けなくらい上手な絵を描いたりなど、何か突出した能力を持っていることもあります。

ただ、「読み・書き・計算」に問題があると、学校の普段の授業についていけず、劣等感や恥ずかしさを感じてしまうこともあります。

そして、不登校にや引きこもりなどの”二次障害”につながるケースも少なくありません。

ですので、親御さんや指導者など周囲の人間が、そのお子さんの特性などを見極め、工夫や配慮をしてあげることも大切になります。

【どうやって診断するの?】
学習障害の診断基準と診断方法

学習障害の診断は、小児科や精神科の医師によっておこなわれます。

また、その際には基本的に以下の2つの手法が取られます。

①親御さんへの質問

②診断基準を用いての観察

それぞれについて、もう少し詳しくみていきましょう。

①親御さんへの質問

お子さんが学習障害か診断する上で、診察室でお母さん・お父さんからお話を聞きます。

発育歴やふだんの家庭でのようす、保育園・幼稚園、学校でのようすなど、お子さんに関するさまざまなことを医師が質問し、それに答える形になります。

また、診断を受けるときに母子手帳や育児日記、保育園・幼稚園での連絡ノートなどがあると、手がかりにもなります。

ですので、診断を受ける際には持参することをおすすめします。

②診断基準を用いての観察

もう一つは、診断基準と照らし合わせながら、親御さんからのお話やお子さんのようすを観察する方法です。

このときに用いられる診断基準は、アメリカ精神医学会が定めた「DSM(※)」が中心ですが、世界保健機関(WHO)が定めた「ICD-10」が用いられることもあります。

DSMはアメリカ精神医学会から出版される「Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders(精神疾患の診断・統計マニュアル)」のことです。

DSMは2013年5月にこれまでのDSM4版(DSM-IV-TR)から、5版(DSM-5)に改訂されました。

主な変更点として、「限局性学習症」という名称になり、発達段階を考えて症状の評価ができるようになりました。

さいごに

ここまで、代表的な発達障害のひとつである学習障害(LD)のお子さんに見られやすい特徴や症状について解説してきました。

もちろん、ここで解説してきた特徴や症状が見られるからといって、必ずしもLDであるということではありません。

ですが、特徴や症状を知っておくことで、お子さんに異変がみられた場合、診断を決意するきっかけになります。

また、LDの症状を改善する上では脳のトレーニングが大事になりますが、それを踏まえても、早めに気づくことは大切です。

(脳は0歳~8歳の時期に急速に変化します。)

そのため、ここまでご紹介した特徴や症状に多く当てはまる場合は、小児科や精神科の先生に診断してもらうことも大切です。

そのような基準として、チェックしてみてくださいね。