「ADHDである自分の子どもが乱暴すぎて、どうすればいいかわからない…」
「発達障害があって、暴力・暴言のクセがある…」
発達障害、特にADHD(注意欠如・多動症)のお子さんは、癇癪を起こしやすかったり、暴力・暴言に走ってしまいがちです。
そうなると、お母さんお父さんも日々の子育て・育児が大変ですよね。
ときに、保育園や幼稚園、学校でお子さんがお友達をぶったり、髪の毛を引っ張ったりしてしまい、問題になることも…。
でも、お母さんからすると、謝ることしかできないし、自分でもどうすれば子どもの症状を改善できるかわからないので、余計に困ってしまいますよね…。
そこで今回は、癇癪を起こしやすかったり、暴力暴言に走ってしまがちなお子さんの原因やその治療方法、関わり方などについて、わかりやすく解説していきます。
【ADHDの症状を改善するには?】
「治療・改善」と「日々の関わり方」が大切
ADHDのお子さんの癇癪や暴力暴言、乱暴なところを改善するには、以下の2つが大切になります。
■症状の治療・改善
■日々の関わり方
「症状の治療・改善」とは、ADHDの症状を根本的に改善するためのトレーニングや習い事、また、一時的に症状を抑える薬物治療などのことを意味します。
一方で、「日々の関わり方」に関しては、ADHDのお子さんに見られやすい特性や症状を踏まえた上でのちょっとした工夫であったり、声掛けを意味します。
この2つを大切にすることで、少しずつ改善することができます。
では、それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
【症状の治療・改善をするには?】
効果的な3つの治療・改善法
まずは、ADHDのお子さんに見られやすい癇癪や暴力暴言の症状を治療・改善するために効果的な方法について、ここでは解説します。
そのような症状を改善するためのものとして、効果的なのは以下の3つです。
①前頭前野のトレーニング
②武道関連の習い事
③一時的な薬物療法
では、それぞれの治療・改善方法について詳しく見ていきましょう。
①前頭前野のトレーニング
ADHDには、主な特徴・症状は「多動症」「不注意」「衝動性」の3つです。
もちろん、これら3つに関連する特徴がすべて見られるわけではないですが、ずっと動き回ったり、何度注意しても態度が治らなかったり、突然衝動的な行動を起こしたりなどの症状がみられることが多いです。
また、これに加えて、忘れっぽかったり、計画を立てることができなかったりすることも…。
これらのADHDに見られやすい症状は、「前頭前野の未発達」で説明できるものが多いです。
前頭前野は、以下のような働きがあります。
✓ 自分の感情をコントロールする(自制する)
✓ 目標を立てる
✓ 予定や計画を立てる
✓ 一時的に複数の情報を保持する(ワーキングメモリ機能)
✓ コミュニケーションを上手にとる
✓ 意思決定・決断をする
また、この前頭前野の役割から、ADHDだけでなく自閉症などの発達障害も総合的に理解できます。
そのため、発達障害の症状を改善する上でも、この「前頭前野」のトレーニングは重要になってきます。
もちろん、発達障害のすべての原因が前頭前野にあるとは言えません。
ほかの脳の領野(海馬や扁桃体など)に原因がある可能性もありますし、脳内のホルモンに原因がある可能性もあります。
(ただ、脳内ホルモンの分泌にも前頭前野は関わっています。)
ですが、前頭前野の発達をしっかりトレーニングすることで、落ち着きがなく走り回ったり、忘れ物を多くしてしまったり、他者とのコミュニケーションがじょうずに取れないなどの症状を改善することができます。
また、前頭前野の発達は一生を通しておこなわれるとされていますが、4~6歳をピークに8歳までが最も発達しやすい時期とされています。
この時期を過ぎてしまうと、トレーニングをしても発達障害の症状を改善しにくくなるのも事実です。
ですので、発達障害である場合は、早めにトレーニングを始め、改善していくことが必要になります。
②武道関連の習い事
これは、あくまでも僕の経験則です。
僕は、空手を幼稚園の年長のときから10年やってきました。
小さいときは、男の子にありがちな、いわゆるヒーロー・仮面ライダー系が大好きで、戦いごっこをたくさんしていました。
ですので、日々お母さんのお尻を蹴ったり、友達と戦いごっこをしたりしていました…。
ただ、強い人には逆らえず、ちょっと自分がぶたれたりするとよく泣く子だったようです。
(自分はさんざん人のことを蹴ったり、ぶったりするのに…)
そのときに連れて行かれたのが、空手でした。
そこでは、友達にパンチしても、キックしても怒られることはありません。
また、わがままなことを言ったり、ちゃんと指示を聞かないと恐い先生からのお仕置きも…。
(お尻キックが日常でした)
よく泣いていましたが、それから、空手以外で、友達やお母さんに暴力をふるうことはなくなったそうです。
また、小学校で友達とケンカしても「空手を習ったら、普通の人には手を出してはいけない」と先生からずっと言われていたので、自分が手を出すことはありませんでした。
(これははっきり覚えています)
加えて、空手では、思いっきり声を出すことができますし、「もう動けない…」というほど体を動かすこともできます。
それに、武道ならではの礼儀作法もしっかりと学ぶことができます。
そのため、大人の人への言葉遣いも習得しましたし、切磋琢磨できる仲間もできました。
もちろん、学校でいじめられることもありませんでした。
このような効果を見ると、ADHDのお子さんの多動や癇癪、暴力暴言を抑えたり、良い方向へ活かすことができるのではないかと個人的には考えます。
また、空手の先生は威厳のある男性の先生がしっかりと面倒をみてくれるので、「一人では手に負えない…」というお母さんの助けにもなると思います。
そのため、気になる方は、一度空手や柔道、剣道などを体験に行かせてみるといいと思います。
③一時的な薬物療法
発達障害の治療法のひとつとして「薬物治療」がありますよね。
実は、これにも実は長い歴史や背景があります。
ADHDは、脳内の伝達物質である「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」の機能低下と結びついています。
そして、これらの脳内伝達物質を強めるために、アメリカでは薬物療法が用いられます。
日本でも、「コンサータ」などの薬物が処方されます。
ただ、薬物療法はあくまでも一時的にADHDにみられる特徴的な症状をおさえるだけで、永遠に効果が持続することはありませんし、根本的にADHDを改善するものでもありません。
(つまり、薬の効果が切れてしまえば、ADHDの症状は見られるということです。)
また、発達障害に使用される薬物は、多くの場合、大麻や覚醒剤と似たものなので、安易な服用や長期間の服用は気をつける必要があります。
ちなみに、薬物療法に関しては、数十年の歴史があるとされていますが、専門家の間での議論は多く、結論に至っていません。
ですが、特別なときや緊急のときに使用するのはしかたありませんが、基本的に薬物療法に頼ることはおすすめしません。
【保護者・先生の関わり方も大切】
ADHDの特徴と関わり方のポイント
「暴力・暴言が見られやすい…」
「すぐにキレるから、ほんとに大変…」
ADHDのお子さんには特にこのような症状が見られやすいです。
このような症状を根本的に改善するためには、先ほど解説した治療・改善法を実践することが大切です。
一方で、このような治療が効果を出すまでには数ヶ月の時間がかかります。
ですので、日々の保護者や先生のちょっとした工夫や関わり方も大切になってきます。
先ほどもお伝えしたように、ADHDのお子さんは、脳の前頭前野の発達が遅れていることで、自分の感情や欲求をコントロールすることができません。
そうすると、お友達が使ってるおもちゃを取り上げてしまったり、順番を待たなかったりする光景がみられやすくなります。
そうなると、お友達とのケンカも起きますし、カッとなってお友達のことを打ってしまうことも…。
そうなったときは、まず「ぶったこと」に対して、それは「いけないことである」と叱りましょう。
(やさしく悟ってあげるという方法もありますが、脳の特徴から見ると、「いけないこと」はハッキリ、記憶に残るように伝えるほうが効果的です。)
そして、必ずその後に、そうなった「理由」を聞いてあげましょう。
(パニックになっていたり、泣いているときはとりあえずそっとしておいて、落ち着いてから話を聞きましょう)
内容を聞いたら、そのようなときに、どのような行動や対処をしたらいいのかを具体的に教えてあげましょう。
そのお子さんが成長して社会のなかで生きていくためには、「ルール(法律)を守る」ことはもちろん、人との関わり方やコミュニケーション能力も必要です。
子どものうちに、そのようなことをトレーニングしたり、経験したりする機会を与えないと、大人になったときに苦労するのはお子さん自身です。
そのため、保育園や幼稚園、小学校のなかでまったくちがう環境で育った他の子どもと触れ合う経験は大切にしてあげましょう。
(もちろん、いじめや嫌がらせなどが起きていないかは先生と連携してチェックし、ようすをこまめに聞くことも大切です。)
【さいごに】
「改善・治療」と「関わり方」の併用が大切!
ここまで、発達障害、特にADHDのお子さんに見られやすい癇癪や暴力・暴言などの症状を改善するための方法について解説してきました。
ただ、このような症状は、ADHDのお子さんに限らず、健常児と言われるお子さんでも、見られやすいです。
そのため、決して「発達障害だから」と思う必要はありません。
(そもそも、発達障害のお子さんと健常児と言われるお子さんを明確に区別することはできません)
ここまでのことを踏まえて、まずは、ここで解説してきた「改善・治療」と「日々の関わり方」の2つを実践してみるようにしましょう。