「うちの子どもはすぐに集中が切れてしまう…」
「子どもの物忘れが多くて、注意力がない…」
このような症状が多く見られるときに、「ADHDなのではないか」「多動じゃないのかな…」と不安になることもありますよね…。
ADHDは、代表的な発達障害のひとつで「注意欠如・多動症」などと言われています。
また、最近ではテレビやネット、教育本でも「発達障害」や「ADHD」などの言葉が多く見られるようになり、なかにはあなたの不安を煽るような誇大広告もありますよね…。
ただ、ADHDの子どもに見られやすい特徴や症状は健常児とされる子どもにも多く見れれますし、むしろ活発で好奇心が旺盛である子どもであるともいえます。
そのため、「ADHDなどの発達障害=悪い」という社会の雰囲気や風潮が感じられることがありますが、ぜんぜんそんなことはありません。
ただ、たしかにADHDの症状が悪化したり、過度になったりすると、そのお子さんが社会でこれから生きていくときに”生きづらさ”を感じてしまうことも…。
ですので、改善できるところは適切な脳のトレーニングや療育などによって改善することは大切です。
また、はやめに改善するためにも、お子さんがなるべく小さい(若い)うちに、診断を必要に受け、結果に応じて対策・改善することも大切です。
(お子さんが発達障害であった場合、その発見の時期が早ければ早いほど、改善できる可能性も高くなります。)
そこで、今回は、「ADHD(注意欠如・多動症)」のお子さんに見られやすい特徴や症状、その診断方法についてわかりやすく解説していきます。
ただ、ここでご紹介する特徴に当てはまるからといって、必ずしADHDであるとは限りません。
ここまでを踏まえて、診断を受けるか迷っている方や「子どもがADHDかも…」と不安に思っている方が参考にしていただけると幸いです。
【どんな特徴・症状が見られるの?】
ADHDのお子さんの15の特徴・症状
ADHDのお子さんには共通して見られる特徴や症状があります。
具体的には以下の15の特徴・症状があります。
①じっとしていられない
(手足をソワソワ動かしたり、トントン叩いたりする、席を離れるなど)
②集中力がぜんぜん続かない
(音など”外からの刺激”に敏感)
③集中すると途中で中断できない
④次々に別のことを始める
(静かに遊ぶことができない)
⑤忘れ物やモノをなくすことが多い
⑥言われたことをすぐ忘れてしまう
⑦一方的にしゃべり続けてしまう
⑧話しかけても聞いてないように見える
⑨自分の感情を抑えることができない
(ルールを守れない・順番を待てないなど)
⑩気になったものをさわらずにいられない
⑪計画を立てることができない
(=順序立てることができない)
⑫細かいことに注意を払えない
⑬精神的な努力を続けることがむずかしい
⑭質問が終わる前に答えてしまう
⑮他人を棒介したり、邪魔したりする
では、それぞれの特徴・症状についてもう少し詳しく見ていきましょう。
①じっとしていられない
ADHDのお子さんは、じっとしていられないことが多いです。
たとえば、常に手足をソワソワ動かしたり、何かをトントン叩いたりするなどの行為がみられます。
また、幼稚園や保育園、小学校でじっと席に座ることができずに、走り回ったり、姿勢が悪くなってしまったりなども特徴のひとつです。
ですので、家の中だけでなく、保育園や幼稚園、学校でもこのような特徴・症状がみられる場合はADHDの可能性があります。
(ADHDの診断基準では、2つ以上の場所で6ヶ月以上継続してこのような症状が見られる場合、ADHDである可能性が高いとされています。)
②集中力がぜんぜん続かない
ADHDのお子さんは集中力がぜんぜん続かない特徴が見られることがあります。
集中力の持続時間は個人差がありますが、症状が過度だと2~3分間の読書ができないということも…。
また、これには脳の発達や脳内のドーパミンなどの伝達物質の分泌に異常があったりなど、さまざまな要因が考えられています。
さらに、ADHDのお子さんは、雑音や何気ない些細なできごとに気を取られやすく、そのような”外からの刺激”によって、注意が散漫になり、集中が途切れてしまうともされています。
もちろん、子どもなので長時間の集中はむずかしいですが、明らかに同じ年齢くらいの子どもたちにくらべて集中力が低い場合はADHDの可能性があります。
③集中すると途中で中断できない
先ほどと矛盾しているように見えますが、ADHDのお子さんは一度集中すると、声をかけたり、時間がきたりしても途中で中断できないことがしばしば見られます。
これは、周囲からの声や音を聞き逃している場合もあるため、周囲からすると「無視している」と誤解されることも…。
ですので、なかなかこちらのアクションに反応しないときは、近くに寄り添ってゆっくり声をかけてあげることも大切です。
④次々に別のことを始める
ADHDのお子さんは、ひとつの遊びに集中してじっくり取り組んだり、静かに遊んだりすることができないことがあります。
これは、先ほどもお伝えしたように、音など外からの刺激に気を取られてしまうことも要因のひとつ考えられます。
ですが、自分が見たことないものや新しいものに興味を示したり、飛びついていくのは子どもの良いところのひとつでもあります。
(逆にひとつのものに執着して、それしかやらないとお母さんは心配になりますよね…)
また、以前からADHDの方は創造性が高いという研究報告も出ており、その秘密はこの特徴にあるとも考えられます。
そのため、ADHDの特徴のひとつではありますが、決して悪い点ではないことをしっかりと理解しておきましょう。
⑤忘れ物やモノをなくすことが多い
ADHDのお子さんに見られる特徴のひとつに「不注意」があります。
この不注意の特性があると
「忘れ物を多くする」
「モノをなくすことが多い」
などの症状がみられます。
ただ、これは子ども自身の責任というよりは脳の発達がアンバランスなことに原因があります。
そのため、子ども自身も「どうして忘れてしまうんだろう」と責任を感じていることが多いです。
ですので、忘れっぽさやモノをなくすという特徴が目立つ場合はADHDの可能性があります。
また、このような特徴が見られる場合は、さいごはお母さんやお父さんがいっしょに確認してあげたり、絵などに書いて視覚的にわかりやすくしてあげることが大切になってきます。
⑥言われたことをすぐ忘れてしまう
ADHDのお子さんは、一時的に複数の情報を保持しておく「ワーキングメモリ」の機能が弱いという特徴が指摘されています。
ちなみに、このワーキングメモリは、ちょうどおでこの後ろにある「前頭前野」と言われる脳の領野によって担われています。
この前頭前野が適切に発達していれば、忘れっぽい症状がみられなかったり、言われたことを一定時間覚えておくことは可能です。
ただ、ADHDをはじめ、発達障害のお子さんは通常のお子さんより前頭前野が未発達であるケースが多いとされています。
ですので、「顔を洗って、着替えて、朝ごはん食べて!」と連続で言われても、それを覚えておくことができません。
ですので、ひとつずつ丁寧に指示を伝えることが大切にもなります。
⑦一方的にしゃべり続けてしまう
ADHDのお子さんの特徴のひとつに、「一方的にしゃべり続けてしまう」というものがあります。
また、話の内容がコロコロと変わったり、人の話に割り込んで入ったりすることもしばしば…。
このような特徴は友達関係をつくる上でもネックになったりします。
ですので、このような特徴が見られる場合は、ADHDの可能性があると考えるとともに、話すときのポイントやマナーなどについて少しずつ教えていくことが大切です。
⑧話しかけても聞いてないように見える
ADHDのお子さんは、注意散漫で忘れっぽかったり、モノをなくしたりする特徴が見られやすいこともありますが、逆にハマるとひとつのことに過度に集中することがあります。
そうすると、そのお子さんの脳内では“過刺激状態”になっています。
そのような状態で、お子さんに話しかけても、すぐにリアクションが返ってこないため、「聞いていない」「無視している」ように見えることがあります。
ですので、こちらが話しかけても、聞いていないように見えたり、一定時間の”間”がある場合はADHDの可能性があるので注意しましょう。
⑨自分の感情を抑えることができない
ADHDのお子さんの特徴のひとつに「衝動性」があります。
衝動性があると、自分の感情を抑えたり、コントロールすることができません。
そうすると、お友達と遊ぶときに、順番を待たずに抜かしたり、ルールを破ったりしてしまい、ケンカになることも…。
そうなると、子どもの同士の関係はもちろん、親御さん同士の関係悪化になることもあります。
そのため、このようなルールを守る練習などは家でも取り入れていく必要があります。
⑩気になったものをさわらずにいられない
これは、「多動性」からくるもので、新しいものや見たことないものを目の前にすると、触らずにはいられないというものです。
でも、塗りたてのペンキを触るみたいなもので、これは健常児と言われるお子さんにも見られる特徴のひとつです。
ただ、熱いヤカンや包丁など触れてしまうと危険なものもあるので、そのようなものには注意しましょう。
(私も子どもの頃、「包丁って本当に切れるのかな」と思って、案の定、指を切ってしまったことがありました。笑)
⑪計画を立てることができない
ADHDのお子さんは、先ほどお伝えした「ワーキングメモリ」機能が弱いため、計画を立てたり、順序立てて物事を進めることがむずかしいです。
そのため、朝の支度や学校の準備なども最初はひとりではできません。
(これは健常児のお子さんでも同じだと思いますが…)
ただ、最初はお母さんやお父さんがいっしょにやってあげて、それを根気強く続けて習慣化すれば、改善はできます。
(継続がどれだけ大変なことかはわかっています…)
⑫細かいことに注意を払えない
ADHDのお子さんは細かいことに注意を払えないことがあります。
たとえば、
✓ ひらがなや漢字のトメ・ハネを正しく書けない
✓ 文章を書いていると字が抜けてしまう
✓ 単純な計算ミスや繰り上がりなどを忘れてしまう
ただ、これはADHDでなくても、お子さんに見られる特徴です。
ですので、このような特徴がある、という程度におさえておきましょう。
⑬精神的な努力を続けることがむずかしい
ADHDのお子さんは、集中力が続かなかったり、注意散漫な特徴が見られると、精神的な努力を維持することがむずかしいようすが見て取れることがあります。
やってみてうまくいかないと、すぐにやめてしまったり、楽しくないと続かなかったりして、あまり一つのことを続けることを得意としません。
もちろん、嫌なことを無理やり続けさせるのは子どもの発達にとっても”毒”にもなりえますが、その一方で、がんばった先に得られる達成感であったり、”新しく見える世界”などもあります。
ですので、じょうずにきっかけをつくって、何かに打ち込んだり、一定期間努力をして小さなか成功体験を積ませたりすることは大切です。
⑭質問が終わる前に答えてしまう
ADHDのお子さんは、自分の感情を抑制することがむずかしいです。
それは日々の保育園や幼稚園、小学校でも見られます、
具体的には、先生の質問に対して、それが終わる前に答えてしまうなどの行為です。
これはケースによっては問題ありませんが、その子が先生から指されていないのにもかかわらず答えてしまうと、授業が滞ったり、ほかのお子さんに文句を言われたりして、ネガティブな感情を生まれさせる可能性もあります。
⑮他人を妨害したり、邪魔したりする
自分の感情をコントロールできないがために、相手が夢中になっていることを邪魔したり、妨害することもあります。
そうなるとお子さん同士の友達関係や親御さん同士の関係にも亀裂が入ったり、ネガティブな方向に傾いてしまうことも…。
ですので、社会性や人間関係において大切なことは必要に応じてしっかりと教えることが大切です。
【そもそもADHDってなに?】
ADHDは「多動症・不注意・衝動性」
ADHDは「Attention Deficit / Hyperactivity Disorder」のかしら文字をとったもので、日本では「注意欠如・多動性症」と呼ばれています。
また、ADHDには大きく分けて以下の3つの症状が主にあるとされています。
■多動症
■不注意
■衝動性
この3つADHDの主な特性と言われており、ずっと動き回ったり、何度注意しても態度が治らなかったり、突然衝動的な行動を起こしたりなどの症状がみられます。
ただ、ADHDだからといって、この3つがすべて見られるわけではありません
逆に、自閉症スペクトラム症の感覚過敏などを併せ持つ、つまり、複数の発達障害の症状がが見られることもあります。
ただ、これらの行為は、「子どもらしさ」を表すものでもあります。
ADHDのお子さんは元気で活気があり、いろいろなものに興味・関心を示すなど、良いところもたくさんあります。
また、先ほどもお伝えしたように、ADHDの方は他の方よりも、創造性が高いとされています。
ですので、政治家や起業家、芸術家などにも向いていると言えます。
(アップル創業者のスティーブ・ジョブズやマイクロソフト創業者のビル・ゲイツなどもADHDと言われています。)
ですが、健常児のお子さんと大きく異なるのは、「その場に応じた調整ができない」ことです。
静かにしたり、じっとしたりしなければならない空間でも、自分の感情を抑えられず、暴れてしまったり、走り回ったりする点はしっかりと改善する必要があります。
(このような状態をそのままにすると、お子さん自身が生きづらくなります。)
【女児のADHDは気づきにくい?】
女児のADHDがもつ特徴や症状
ADHDの特性をもつ女の子は男の子と比べて、その特性が表にあらわれにくいとされています。
男の子のADHDの場合、動き回ったり、新しいものに飛びついたりなどの外へ外へ向かう行動がみられます。
一方で、女の子の場合は、とてもおしゃべりな面がある一方で、内気で恥ずかしがりや、そして「心ここにあらず」といったようすが見られることが多いとされています。
ADHDの女の子のこのような態度はあまり目立たず、周囲を困らせることも少ないので、気付くことができずに時間が経ち、支援が遅れてしまうことも…
ただ、先ほどご紹介した特徴・症状以外に以下のような特徴的な言動はあるので、気になる場合は診断を受けてみることを推奨します。
✓ 空想にふけっていることが多い
✓ 先生の話に集中できない・耳が傾かない
✓ 先生に尋ねられることを恐がる
✓ 学校生活で多くのことを恥じている
✓ 学校生活の居心地がよくない
✓ 言いたいことがあっても積極的に話せない
✓ いつも泣きたい気分である
✓ スポーツや運動面に苦手意識がある
✓ 親からやる気のなさを責められる
✓ よくあたまが痛くなる
✓ 朝起きが苦手である
✓ 怒られている理由が理解dけいない
✓ 混雑した場所に行きたがらない
✓ 入浴をさいごまで嫌がる
✓ 寝つくまでに時間がかかる
✓ 集団に入りたくても、入り方がわからない
※ほかにも特徴があります。
【どうやって診断するの?】
自閉症の診断基準と診断方法
自閉症スペクトラム症の診断は、小児科や精神科の医師によっておこなわれます。
また、その際には基本的に以下の2つの手法が取られます。
①親御さんへの質問
②診断基準を用いての観察
それぞれについて、もう少し詳しくみていきましょう。
①親御さんへの質問
お子さんがADHDか診断する上で、診察室でお母さん・お父さんからお話を聞きます。
発育歴やふだんの家庭でのようす、保育園・幼稚園、学校でのようすなど、お子さんに関するさまざまなことを医師が質問し、それに答える形になります。
また、診断を受けるときに母子手帳や育児日記、保育園・幼稚園での連絡ノートなどがあると、手がかりにもなります。
ですので、診断を受ける際には持参することをおすすめします。
②診断基準を用いての観察
もう一つは、診断基準と照らし合わせながら、親御さんからのお話やお子さんのようすを観察する方法です。
このときに用いられる診断基準は、アメリカ精神医学会が定めた「DSM(※)」が中心ですが、世界保健機関(WHO)が定めた「ICD-10」が用いられることもあります。
DSMはアメリカ精神医学会から出版される「Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders(精神疾患の診断・統計マニュアル)」のことです。
DSMは2013年5月にこれまでのDSM4版(DSM-IV-TR)から、5版(DSM-5)に改訂されました。
主な変更点としては、
・自閉症スペクトラム症と同じ神経発達障害に分類された点
・自閉症スペクトラム症との併存が認められた点
・発症年齢が7歳以前から12歳以前へ引き上げられた点
の3つになります。
さいごに
ここまで、代表的な発達障害のひとつであるADHD(注意欠如・多動症)のお子さんに見られやすい特徴や症状について解説してきました。
最初にもお伝えしましたが、ここで解説してきた特徴や症状が見られるからといって、必ずしも自閉症であるということではありません。
ですが、特徴や症状を知っておくことで、お子さんに異変がみられた場合、診断を決意するきっかけになります。
また、ADHDの症状を改善する上では脳のトレーニングが大事になりますが、それを踏まえても、早めに気づくことは大切です。
(脳は0歳~8歳の時期に急速に変化します。)
そのため、ここまでご紹介した特徴や症状に多く当てはまる場合は、小児科や精神科の先生に診断してもらうことも大切です。
また、ADHDのお子さんとどのように関わっていけばいいかに関しては以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもしっかりとチェックしてみてくださいね!